2003年6月議会一般質問原稿

いつも質問中にいくつか大きな声にならない人の声を取り上げようと思っています。今回は性的マイノリティーと言われる、同性愛者、性同一性障害者、インターセックスのかたの問題を取り上げました。また、選挙後ですので、選挙のこと。SARSはやはり今取り上げるべき課題だと思いました。

1.第一質問    2.第2質問     3.意見

始めに、性的マイノリティーならびに性同一性障害の人権を擁護するために、いくつか質問をしたいと思います。

 

人権教育のための国連10年が1995年から2004年まで制定され、国内においても1997年国内行動計画が明らかにされました。2000年12月には人権教育および人権啓発の推進に関する法律が制定施行されました。2001年5月25日人権擁護推進審議会により“人権救済のあり方について”が答申され、2002年3月15日「人権教育・啓発に関する基本計画」が閣議決定されました。それらの中で性マイノリティーの救済が初めてうたわれました。人権擁護法は先の国会に提案され、現在参議院法務委員会で審査されております。また、今国会において議員提出議案として性同一性障害者の救済を目的とする戸籍法の改正がされると6月10日に報道されております。

 

このような人権教育・啓発にたいする取り組みの高まりの中で、性的マイノリティーも人権の救済の対象としてようやく取り上げられるに至りました。性的マイノリティーは法律用語では性的指向等と言う言葉で取り上げられ、積極的救済がされるべきであるとされております。性指向による差別を受けているとして、同性愛、性同一性障害、インターセックス、すなわち先天的に身体上の性別が不明瞭の者が差別解消を必要な対象とされています。

 

現在では、同性愛、性同一性障害、インターセックスも発生学上の何らかの異常がこのような事を引き起こしているのではないかといわれています。

 

たとえば、性同一性障害は、受精してから胚が形成されるまでの早い時期におけるY染色線上のDNAからの指令の何らかの不具合や、女性または男性ホルモンの分泌の異常による、性器官の形成と脳の分化の際のずれなどによるものとされています。性に対する自認と自らの性器官が反対である事が特色です。すなわち、自分は女性だと思っているにもかかわらず、身体的には男性であるという具合です。また、逆の例もあります。自分は男性だと思っているにもかかわらず、身体的には女性である。

 

同性愛者は性自認と身体的な性とは一致していても、性指向は同性に向けられています。これは脳の性分化が進む際2段階で進み、性自認をつかさどる神経と性指向をつかさどる神経がたとえば男性へと分化するとき、男性ホルモンの感受性に違いがあるのではないかと言われます。すなわち男性ホルモンが、性自認を男性化するには十分であっても性指向が男性化しないという量であるときがあるといわれています。この場合、この男性は同性愛者となるといわれています。

 

インターセックス、すなわち身体上の性別が不明瞭な場合においては、一層発生学的な混乱は明らかだと思います。

 

このように、身体的性、性自認、性指向の混乱は、自らが望んだ事ではなく起こっているのだという事がよく分かります。ですから、同性愛、性同一性障害、インターセックスなどは、巷ではみだらな思いのように考えられがちですが、そうではなく、そういう風に生まれてきたと最近では考えられているのです。私は、性マイノリティーの問題をいわゆる障害と同じ次元で考えてもよいことかなと思います。ですから、私はこれらの性的マイノリティーに対する、偏見や差別をなくしていくことは、憲法で保障している基本的人権を確保し、あらゆる人の人権を尊重する上でも大切なことだと考えています。

 

そこで、性的マイノリティーの人権問題、人権侵害をどのように認識しておられるか狭山市としてのお考えを伺いたいと思います。

 

性的マイノリティーのうち性同一性障害者に対しての人権の配慮について特に伺いたいともいます。先ほども申し上げたように、性同一性障害を持つと心の性と体の性が一致せず、大変苦しむといわれています。わが国において、1997年に日本精神神経学会でようやくガイドラインが定められ、カウンセリング、ホルモン治療、性別適合手術が合法的に可能になりました。

 

しかし、今でもなお、蔑称で呼んだり、変態扱いする事があったり、のけ者にされたりすることが往々にあります。性別を移行し望みの性別で生活を送っている人にもさまざまな差別があります。たとえば戸籍謄本や住民票、年金手帳の提出が難しいために、正社員として会社に勤める事が困難である事。パートナーがいても婚姻ができないこと。保険証の性別の記載と姿が異なるのでトラブルを生じる事。パスポートに記載されている性別と外見が違うので旅券手続きなどに困難があること。選挙の際、投票状に記されている性別と外見が異なるために、トラブルを生じる事。

 

このようにこれらの人は望みの性別として扱われる事はおろか、社会に加わる事すら困難になっています。社会的困難や差別を受けた性同一性障害者の3割は自殺未遂や自傷行為が見られると言われております。

 

私は、これらの方々の人権を保障し、社会生活上の人権侵害を救済するためにも、狭山市において、申請書類や証明書類などからできる限り男女の区別の記載を省略していくべきだと思います。書類上の男女の記載が性同一性障害者の生活上の困難を増しているからです。現在狭山市では男女を記載している申請書、証明書類などの実態はどのようでしょうか。男女の記載を省略できる書類はどのくらいあるのでしょうか。実際、できるものから、省略していくべきであると思いますが、いかがでしょうか。

 

私は、この証明書類等の男女記載をできる限り省略し始めたという新座市を先般視察いたしました。新座市においては、収集分・発行分を合わせ230ほどの男女の記載してある書類があるそうですが、そのうちの88件を様式変更可能とし、87件を変更したそうです。印鑑証明に関しては条例で定めてあるので、条例改正を行ったそうです。これらの書類には人事課においての採用試験時の履歴書、老人医療費受給者証などに加え、選挙時に使う投票所入場券、不在者投票証明書なども含まれています。このような取り組みは、東京小金井市、埼玉県草加市、鳥取市、倉吉市などでも始まっております。民間でも福島県のある総合病院では診察券から男女の記載をなくしたということです。

 

選挙は憲法によって保障されている成人の権利であります。この権利を妨げるものがあったときには、それをなくする努力が必要とされると思います。性同一性障害者の方の多くは選挙にいけないという思いがあるそうです。じろじろ整理券と姿を見比べられるのがいやだという事のようです。今回の統一地方選挙では、性同一性障害をもつ世田谷区の上川あやさんが区議会議員に当選しました。戸籍では男性とされているのですが、女性として立候補し、当選をはたした画期的なことでした。このように、同一性障害者も立候補すると言うだけでなく、選挙に行くのが当然の行為であるわけです。ですから、性同一性障害者にも投票しやすい環境を作り上げるために、狭山市は新座市に習って、投票所入場整理券における男女の記載をやめるべきだと思いますが、選挙管理委員長のお考えを伺いたいと思います。

 

また、性同一性障害者への配慮は、学校の場においてもなされるべきであると思います。なぜなら、思春期の性同一性障害者は自分の思う性で生きられないための不快感、違和感でかなりの葛藤があります。制服を拒むものが多く、著しい男女わけにより、学校での無為、学業不振、登校拒否、問題行動、自殺なども見られるといわれます。特に性同一性障害の傾向を見せる女子の場合は、男女わけや女子の制服に耐えられず、高校進学を断念する者や中途退学するものも少なくないそうです。このような事実を踏まえ、教育委員会は人権救済の立場から、現在の制服の男女の区別について検討し、男女ともに喜んで着ることができるような制服の選定を指導していくべきだと思いますが、教育長のお考えをお聞きしたいと思います。

 

このような性的マイノリティーに対して、私も含め偏見と差別があった事は否めないと思います。これをただし、この人たちの人権を尊重するためには一層の教育、研修、啓発が必要だと思います。職員の研修、学校教育、性教育、社会教育、生涯学習、などの場面でどのようにされていかれるか、執行部、ならびに教育委員会から、現状を踏まえ、性的マイノリティーの人権に対する研修、教育・啓発についてのお考えを伺いたいと思います。

 

この性的マイノリティーの人権問題は戸籍の法律改正も含め、国会から自治体にまで大きな波紋を起こしております。東京小金井市、埼玉県新座市、和光市、草加市では性同一性障害を抱える人々が普通に暮らせる社会環境の整備を求める意見書が政府にあてて出されております。鳥取市で請願が採択され、倉吉市でも積極的に改善を図っているそうです。今後このような動きは全国で広がっていくことでしょう。狭山市にも性同一性障害をもつ方もおられ不自由な思いで生活しています。性同一性障害を自ら社会に明らかにしている、いわゆるカミングアウトした方よりも、したくてもできないで苦しんでいる人が多いのが実態です。狭山市も人権尊重の立場から早急の対処をお願いいたします。

 

次に選挙について伺いたいと思います。

 

4月に統一地方選挙が挙行され、私たち狭山市議会議員も選ばれました。残念ながら、今回は投票率が下がり、男性の場合、とうとう50%をしたまわり、48.48%となってしまいました。今回は有権者が前回に比べ2160人も増えたにもかかわらず、反対に3186人も前回に比べ投票した人が少ないという事になってしまいました。市議会は生活に密着した市民に身近にかかわる事を多く決めます。多くの人に選挙に行ってもらい、市民の代表者を決めてもらいたいという思いでいっぱいです。

 

そんな思いでいましたところ、選挙が終わり、有権者のかたがたからいろいろな選挙へのご意見や苦情が寄せられました。まず、今の状態は高齢者には選挙しにくくなっているというのです。確かに、高齢者率も上がり、後期高齢者の数も多くなってきています。そんな中で、昭和61年以来有権者数は約3万5千人も増えたにもかかわらず、投票所の数は31と変わりません。もっと身近に投票所があれば、選挙しやすいのは明らかでしょう。高齢化の現状を踏まえ、投票所の数を増やしたり、投票所の場所を変える、リロケーションするなど改善すべきだと思いますが、選挙管理委員会のお考えはいかがでしょうか。

 

投票率が下がっているにもかかわらず、好評なのが不在者投票です。公職選挙法がこのたび改正され、期日前投票と言うらしいのですが、この期日前投票をもっとしやすくするのも、投票率を高めたり、体の不自由な方や高齢な方の投票には有効な手段ではないかと思います。入曽駅や新狭山駅近くに期日前投票所を設置したらどうでしょうか。また、将来的にはオンライン化して各出張所ででも期日前投票できるようにしたらどうかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

 

今まで不在者投票は8時半から8時までとなっていました。週何日か出勤前の7時ごろから投票するというふうにはならないでしょうか。遠くへ行く通勤者には便利だと思いますがいかがですか。

 

最後の質問は、いま世界を震撼させている感染症、SARS対策についてお聞きしたいと思います。

 

SARS・重症急性呼吸器症候群は2002年11月中旬中国広東省で初めて症例が確認されて以来、中国、香港、台湾、シンガポール、カナダへと世界的な広がりを見せております。去る5月にSARSを発病した台湾人医師が日本観光旅行をしたことが明らかにされ、多くの方々が2次感染を心配した事は記憶に新しく、厚生労働省はその台湾人医師の全行程を明らかにし、国民の不安を取り除くことに腐心いたしました。

 

いま、多少SARSは下火になったといわれておりますが、台湾やカナダの様子を見ますと、決して感染が終結したようには思えません。特にカナダのトロントの状況を見ますと、制圧したかのようにみえたのち、また毎日感染者がでているという状況も見られます。SARS感染者の死亡率が高く、治療法も確立されていない現状に起きましては、何かと不安に感じても仕方ありません。

 

そこでお聞きします。もし、何らかの理由で感染の疑い、恐れ、不安を感じたとき、本人はどのようにしたらよいのでしょうか。万一、こういう状況が出てきたとき、狭山市はどのように対応するのでしょうか。県、保健所、病院、救急車、家族への対応・連携をどうするのかをお示しください。また、万一の場合、正確な情報の公開、不安の相談などが必要となります。市民に対しての対応をどのようにし、SARS対応を周知していくかについてもお示しください。

 

人権問題が絡みますので、SARSに対する不安は大きな声とはなりませんが、狭山市でもひそひそと不安が語られております。人権侵害とならないように注意を図りながらも、2次感染をしっかり防ぐようにするためにもきちっとした対処が必要です。明瞭な答弁をお願いいたします。

 

第2回質問


次に質問と要望を申し上げます。

まず、狭山市は性的マイノリティーの人権問題と人権侵害があることを認識し、その解決にたいし、積極的に取り組むこと。他の施策においても、性的マイノリティーにとって、差別を助長しない、いや差別をなくする方向で問題を見ていきたいと答弁されたと思います。この事はきちんと確認しておきます。

その上にたち、申請書類の男女の記載をできる限り少なくしよう、そのために見直しをしようというのは大変よいことだと思います。しかし、見直すほうに、性マイノリティーにたいする人権の配慮をするのだという理解や認識がなければ、現状のままになってしまうでしょう。ですから、研修をしていくと言っていますが、早急にこの障害についての理解を深める手立てをするべきだと思います。そして、新座市や他市のように、たとえ国からの様式が示されていようとも、法的な根拠のないものは改正するのだという思いで男女の記載についての見直しをしてもらいたいと思います。

 

また、性的マイノリティーの方とのトラブルが起き易いのが窓口です。特に、窓口業務をしている人に対しての、性マイノリティーの方への対応の注意のようなものを作り、無意識に人権を侵害しないような職員教育がすぐ必要となると思います。パンフレットとはいいませんが、チラシのようなものをすぐに作られてはいかがかと思いますが、総務部長の考えを伺いたい。

本人確認は性同一性障害を持つ方には、外見と性が違うので非常に好奇心丸出しで見られるときが多いといいます。印鑑証明などの申請書類は男女の記載がなくても、また証明書も男女の記載がなくても、構わないとされています。私は、狭山市も早く条例を改正して、印鑑証明書の男女の記載をなくす事を要望します。運転免許証には写真はついていますが、男女の記載はありません。本人確認の手立ては他にあるのだから、何も印鑑証明によって男女の区別が分かる必要はないのではないかと思います。そういう視点で書類を見てみると、私は先ほどの狭山市の男女の記載をやめてもよいという数字は、私たちと同規模の新座市程度になると思うのです。この事については、12月議会でもう一度伺いますので、全庁でのとりまとめをそのときまでにお願いします。

 

教育委員会の答弁は私の真意を取り違えているのかなと思います。制服を区別しない事は結果として出てくるかもしれませんが、私が聞きたいのは、性的マイノリティーの認識があったときに、制服をどう捉えるかという点をはっきりしてほしいという事です。これについて、答弁お願いします。要するに、学校における性マイノリティーに対する考えを教育長に伺いたいと思います。学校において、性的マイノリティーを人権問題として認識し、人権侵害について救済していくお考えがあるのかという事です。

先に制服については、PTAのご希望を聞きながらも、校長の学校経営の中で考えるという答弁を田村議員の質問に教育長はお答えになっています。私は校長に性マイノリティーに対する人権侵害についてもっとよく知ってもらう必要を感じています。そして、校長を通じ、PTAや生徒に制服についてもう一度考え直してもらいたいと思うのです。狭山市の校長先生は性マイノリティーの人権についてどんな認識でいると思いますか。この人権問題を理解すれば、学校運営も変わっていくと思います。校長に対する性マイノリティーの人権研修をすぐにでもするべきですが、教育長の考えをお聞きしたい。

ズボンをはきたいといった女生徒がいたと聞いて、少し胸が痛い思いです。どんな風な思いで言い出したのだろうかと想像します。言い辛かっただろうなと思います。後のフォローで元気にしていると聞いてよかったと思いはしますが、これが性同一性障害を持っている生徒だったらどんな風になっただろうかと悲しい思いでいっぱいです。性同一性障害は、表面にはでてきていませんが、男性は3000人にひとり、女性は1万人に一人と言われています。学校にいれば、たった一人でも足の悪い生徒がいたら、スロープもつけるし、トイレの改修もします。性同一性障害だって性マイノリティーだって、決して自分で好きでなったのではなく、障害なんです。他の障害を持った人たちやいじめにあった子供たちへの配慮と同じ、優しい心遣いが必要です。教育の現場だからこそ、性マイノリティーの人権にはもっともっとセンシティブになっていてほしいと願います。

 

選挙に関しては、投票所の見直し等しっかり検討をしてほしいと思います。いろいろ困難はあるでしょうが、積極的に見直してほしいと思います。合併があるかもしれないからという話を聞きましたが、まず、合併ありきで様子を見るというのは私はいけないと思います。合併が正式に決まるまでは、狭山市民のために、狭山市民が生活しやすいように心を一つにして職務に当たってほしいと思っています。そのところをつよく釘をさして起きたいと思います。とにかく、高齢者が選挙に行きやすく、陶業率の上がるような工夫をよろしくお願いします。

 

SARSでは、やはり学校、病院などで感染者との接触があった場合、市民は怖いと思います。そのような時、狭山市は県と連携してどのような行動をとるのでしょうか。教育委員会や医師会などとの連携はどうなっていますか。もう一度答弁お願いします。


意見

最後に教育委員会に一言要望をして終わります。

まず、性的マイノリティー、すなわち同性愛、性同一性障害、インターセックスなどに対する偏見は、その障害に対する無理解のゆえにまだまだ強いものがあります。この偏見との戦いは、やはり教育の力によらなければならないと私は感じております。小さいうちから、いろいろな障害を持つ人に触れ、それを受け入れていれば、違和感も少なくなり、差別は徐々に解消していく事だと思います。教育委員会が社会教育、学校教育を通じ、人間一人一人がどのような状態であろうとも貴重で尊いものだということを教えてほしいと願います。児童、生徒だけでなく、狭山市民に理解していただくように、人権教育には一層心を砕いていただきたいと思います。

 

SARSの問題ですが、教育委員会は万が一の時には休校などの処置も必要になるかもしれません。状況判断を的確にし、2次感染が未然に防げる体制を確立しておいていただくことを強く要望いたします。